330 研究施設の現状と将来計画
8-2 分子スケールナノサイエンスセンター
自然科学研究機構・分子科学研究所・分子スケールナノサイエンスセンター規則第2条に,ナノセンターの設置目 的として「センターは,原子・分子レベルでの物質の構造及び機能の解明と制御,新しい機能を備えたナノ構造体の 開発及びその電子物性の解明を行い,これらが示す物理的・化学的性質を体系化した新しい科学を展開するとともに, ナノサイエンス研究に必要な研究設備の管理を行い,これらを研究所内外の研究者の利用に供し緊密な連携協力の下 で共同研究等を推進することを目的とする」との記載がある。即ち,ナノセンターは「ナノサイエンス研究を行う」 機能と,「ナノサイエンス研究に必要な研究設備の管理と共同研究の推進」という機能が要求されていることになる。
平成19年度からは,分子研の組織改編に伴いこれまでのナノセンターの機能が(新)分子スケールナノサイエン スセンターと(新)機器センターに分かれることになった。ヘリウムや窒素の液化機・供給装置を含め汎用的な装置 類およびそれらの装置の責任者であった技術職員は機器センターに所属替えとなった。センター長は,物質分子科学 研究領域・電子構造研究部門の横山利彦教授が併任で務め,ナノセンター専任教員は,ナノ分子科学研究部門の小川 琢治教授(平成19年9月に大阪大学大学院理学研究科教授として転出,以降は当センター兼任),鈴木敏泰准教授, 永田央准教授,櫻井英博准教授,先導分子科学研究部門(客員部門)教員に加藤晃一教授(名古屋市立大学大学院薬 学研究科,平成20年4月より岡崎統合バイオサイエンスセンター教授に着任)が配置された。
共同研究支援に関しては,平成19年度から文部科学省のナノテクノロジー・ネットワークプロジェクト(5-5 参照) を研究所として受託し,ナノセンターの業務としてこれを運営しており,この業務を遂行するため,併任教員を配置 した。ナノ計測研究部門には,横山利彦教授,西信之教授,岡本裕巳教授,永山國昭教授(岡崎統合バイオサイエン スセンター),ナノ構造研究部門には,魚住泰広教授,永瀬茂教授,佃達哉准教授(平成19年10月に北海道大学触 媒科学研究センター教授として転出)が併任し,ナノネットプロジェクト業務を実施している。ナノセンターが管理 する共通機器は,920MHz NMR ,300kV分析透過電子顕微鏡,走査電子顕微鏡,集束イオンビーム加工機,クリーンルー ムがあり,クリーンルームを除いてはナノネットを通して共同利用(協力研究と施設利用)に供されている。ナノネッ トの内容や成果に関しては 5-5 に記述する。
センター運営委員会は,センター長を委員長とし,専任併任教授・准教授全員,センター以外の教授・准教授若干名, 外部委員からなる。19年度外部委員は,宇野英満愛媛大総合科学研究支援センター教授,松重和美京都大学大学院 工学研究科教授,村田道雄大阪大学大学院理学研究科教授であった。特に超高磁場 N M R に関する現状と将来に関し て評価や提言をいただいた。
超高磁場 N M R は昨年まで実施されていたナノサイエンス支援において設置された。溶液から固体試料のナノ構造 精密研究を実現する世界最高かつ唯一の装置である。本機の機能を縦横に活用して固体ナノ触媒,有機−無機複合コ ンポジット,C N T (カーボンナノチューブ)及びフラーレン類縁体の精密構造研究,タンパク(中でも膜タンパクや 糖タンパクのような難結晶性複合タンパク),海洋性巨大天然分子などのナノサイズ分子構造体の高次構造や動的挙 動の精密解析などに対して,ナノネットを通して共同利用に供されている。
平成20年4月より,岡崎統合バイオサイエンスセンター教授として加藤晃一教授が着任しており,これまで以上 に精力的に本装置を活用したタンパク質構造解析研究が遂行される。また,物質分子科学研究領域・分子機能研究部 門の西村勝之准教授(ナノ構造研究部門併任)は温度可変プローブなどの開発を行い,本装置を活用した研究展開が 進むであろう。さらに,桑島邦博教授のグループもパワーユーザーとして加わり,所外共同利用を含めてますます充 実した先端利用が期待できる。
研究施設の現状と将来計画 331 今後,短期的には,以下のような事業を計画中である。
(i) 既に利用経験のある多くのユーザーや新たな潜在的ユーザーに広く超高磁場 N M R 装置の現況および施設・設 備の環境や機能を周知するため,ニュースレターを発行する,
(ii) 分子研を代表する大型測定機器として,より利用アクセスを高めるためのパンフレットなどを作成する, (iii) 溶液,固体双方の温度可変測定(温度可変領域の拡張)の実現に向けた検討を開始する。
また,人事に関しては現状で当面特に問題はないと考えるが,中期・長期的な事業展開として N M R 高度化を推進 する。このため,まずは予備測定の実施を可能ならしめる 600M H z クラスの固体測定に対応できる中規模 N M R 装置 の導入を実現したい。920M H z N M R を最大限有効に活用するには,同じ環境で作動する予備装置を利用できること が極めて重要である。また,現状では
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H と
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N の 2 核種しか測定できないので,核種の拡張を目的としてプローブ の開発をも目指す。これらの高度化を実現するため,また,分子研 N M R をコアとした全国研究ネットワークを形成 して,外部資金獲得を目指す。